とよた真帆さん、「認知症の母と過ごす中、 今いる場所で輝く方法を知りました」

モデルから女優へと転身し、シュッとした出で立ちが印象的なとよた真帆さん。
そんな真帆さんの近況は……? と探ってみたら、
今、女優のお仕事より優先して、認知症のお母さまとの暮らしを大切に
毎日を過ごしているそう。
そして、今ある環境で自身ができるお仕事に積極的に取り組んでいらっしゃいます。
そんな、とよた真帆さんの知られざる毎日を、赤裸々に語っていただきました。

認知症の母との生活の中で起こる小さな事件を笑いに変えて

30代40代の私は、早朝起きてロケに行き、芝居をして戻る。
そして、また次の朝早く起きてロケへ行く。
そんな、記憶がなくなるほどの猛烈な日々を過ごしていました。
でも、今は長期のロケや家を空ける女優の仕事は積極的には受けていません。
なぜならば、母が95歳になり、認知症が進んでいるからです。
ずっと母と一緒に暮らしていますが、母は、体は元気なんです。
ただ、元気すぎるがゆえに、色々やってくれようとして、洗濯機を何度も回してしまったり、
私が飼っている金魚やグッピーにパンを大量に入れたり、バームクーヘンをあげてしまったり。
バターや油で水がベタベタになって、数匹、死んでしまったこともあります。
その時は、さすがに泣きながら水槽を掃除しました。
愛猫や愛犬に、カレーやチョコレートなど、絶対ダメなものをこっそりあげようとすることも。
そこは命に関わることなので本気で怒ります。
先日、ハイブランドのパーティーにお招きいただいた際は、そんな日常から一転、
久しぶりにロングドレスを着て、素敵な夜を過ごしました。
でも、実は、その直前までキッチンで母のためにハンバーグを焼いていたんです(笑)。
母は食べた事を忘れる事も多いので、食卓の写真を撮るのが日課です。
母との生活は、その時々でパニックになることもありますが、
過ぎてしまったら、実は大したことじゃない。
この時間を大切に生きて行こうと思っています。
同じ境遇のご近所さんとすれ違ったときに『うちの母がまたこんなことしてね!』
って話すと『あら、うちなんてこうよ!』って笑って共感してくれて、励まし合っています。
「人生の大事件」はそうそう起きないけれど、
「小さな事件」は毎日必ず起きている、という感じですね(笑)。

今は、家でもできる裏方のお仕事に全力投球しています

今、考えると40代までは、仕事で忙しい毎日を、ただ一生懸命に、必死に生きていました。
当時はどこかで「仕事をしていなきゃいけない」という強迫観念があったのかもしれません。
実は15年くらい前から、本名の「青山真穂」として裏方の仕事もコツコツ始めていました。
広告のキャスティングです。
タレントさんにオファーする時も、最初は本名でメールを送っていました。
「青山真帆と申します。ぜひこのお仕事をお願いしたくて」って。
そのあと直接お話ししなければならなくなったタイミングで、
「実は……、とよた真帆です」とお伝えして、びっくりされたりして(笑)。
別のプロジェクトの時もそうでした。アンバサダーをお願いしたい方の事務所に
何度も足を運んで、真剣に交渉させていただいたりもしました。
今は上場を目指す会社の社外取締役もやらせていただいています。
“名前だけ”の存在ではイヤなので、取締役の会議出席に留まらず、
会社がもっと良くなるための企画を全力で考えているんです。
他にも、盲導犬協会でも理事を務め、盲導犬のサポート、普及に力を注いでいます。
若い頃のようにガムシャラに表に立つだけではなくて、
裏方として人を繋いだり、経営を支えたり。
今、自分にできることに全力で向き合っています。

限りある時間の中、「違う」と思ったら抗わず手放すことで次の扉が開く

年齢を重ねて、「人間の時間って有限だな」と実感するようになってから、
むしろエンジンがかかってきた感じがします。
また、アクシデントや何か問題が起こったときって、
間違った道を進まないように教えてくれるサインなんだと思います。
“そっちじゃないよ”、“そのまま進んじゃいけない”ということだから、
「そっか、違うんだ!」と思ってサッと発想を転換します。
抗わないこと、手放すことも大事。
情とか思い入れがあると難しいけど、“あ、違うな”って思ったら、潔くやめる。
そうすると、次の扉が開き、新たな出会いも訪れるのだと思います。

Maho Toyota
1967年東京都生まれ。
高校在学中にモデルデビューしパリコレクション等にも出演。
1989年には女優デビュー以降多数のドラマや映画、舞台等に出演。
また芸術の造詣が深く絵画の個展を開き京友禅の絵師として着物のデザインを手がける。家具などの木工、手芸もこなし、DIY番組を持つ等、趣味の域を超えた活動を展開。

撮影/田頭拓人 取材/見学裕己子、山崎智子 構成/河合由樹