
モデルから女優へと転身し、シュッとした出で立ちが印象的なとよた真帆さん。
映画やドラマからは今、少し距離を置く今のとよたさんは、レストラン経営にドローン操縦、
絵画にDIYに……と、30代、40代とは異なるライフスタイルを楽しんでいるよう。
2年前に最愛のご主人を失った後も、前を向き「今」を楽しむとよたさんのお話は、
私たちにポジティブなパワーを与えてくれます。
“ご縁あって”始めたレストランが、私の生きる力に

夫が亡くなってから2年くらい経った時に、一人でご飯を食べる時間が増えて来た矢先
一人で食べる日が続くと、単純につまらない。
「じゃあどうする?」と考えていたときに、「この場所を貸すからレストランを
やってみない?」という話が舞い込んできたんです。
なぜか、迷うより先に、やってみようと思ってしまって。
これも何かの縁かなと。
ただ、お店を持つ大変さは知っていました。
実は母がお店をやっている姿を子どもながらに見ていて、「忙しそうだな」
「大変そうだな」と感じ、「私は絶対、店なんかやらない!」そう思っていたんです。
なのに、うっかり自分がお店を始めるなんて。
人生って不思議ですよね。
お店を始めることになり、「さあ、店名を決めよう!」という段階で
私は映画監督だった夫が手掛けた作品のタイトルを全部書き出しました。
それで、「この店の名として似合うタイトルはどれだろう?」って考えたんです。
私が好きな作品は、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』なのですが、
周囲に意見を聞いてみたら、「言いにくい!」「覚えにくい!」と店名としては好評ではなく(笑)。
『路地へ 中上健司が残したフィルム』という
作品タイトル。“路地へ”をカタカナで書いて“ロジエ”、響きが可愛いしフランス語で
バラという意味もあって。
それに、『路地へ』は、夫が大切にしていた作品。
コレだ! と思いました。
レストランを始めて2年、今は常連さんも増えてきました。
私の店だと知らずに来店する方も多いですし、若い人の中には私のことを知らない人もいて(笑)。
「あの方女優さんなんですよ」ってスタッフに言われて、「へーっ」って(笑)。
私的には、いろんな人と出会えるのが新鮮で面白い。
お友達がお友達連れてきてくれて、友達の輪がどんどん広がって、
レストランを始めてよかったと思っています。
食べることって、生きていくことそのものだと思うんです。
楽しめないと、元気が出ない。
毎日、友だちと外へ繰り出す体力も気力もない。
今は、自身のお店で色々な人たちとお話しながらご飯を食べて、
元気をたくさんもらっています。
「面白そう」を拾っていたら、点が線になり、人生になる

そもそも、思い起こせば昔から私は、思いついた事をすぐに行動に移して来ました。
そして、結果的に、それが今の私を作ってきました。
イヤなことは、基本やらない。
ちょっとやってみて「違うな」と思ったらやめる。
逆に、興味が湧いたら、たとえ軽い気持ちで始めても、最後までちゃんとやり切る。
だから 色々な事に挑戦しているので、周りから「何になりたいの?」「どこに向かっているの?」と皆によく聞かれますね(笑)。
私は、目的地ありきで動くというより、“面白そう”を拾っていったら、
点が線になっていくタイプなのでしょう。
たとえば、ドローン操縦の免許資格。
友だちに「興味ある?」と聞かれて「あるある!」と答えたら、
あっという間にスクールに通う事になっていました。
その後でYouTubeで大変さを見て、「ちょっと待って! 無理かも……」と弱気に
なったけれど、一歩踏み出した以上、やるしかない。
学科も実地もなかなか難しくて、数ヶ月追い込まれました。
先生は25歳の金髪の可愛い女の子で、58歳の私が「はい!先生!」と言いながらその子にドローン操縦を習う姿を客観的に見て、人生って面白いなって思ったりして(笑)
私、学生時代は勉強が苦手だったんです。
でも、大人になり女優という仕事で“覚えて熟考していく”ことを繰り返していくうちに、
少しずつコツが分かってきました。
それでも自信はないから、もう、必死で勉強しましたね。
試験の日の2週間くらいは、スケジュール帳に「ドローン勉強」ってびっしり書いて、
空いている時間は全部そこに集中していました。
合格の結果を見た時は嘘みたいで、ジワッと涙が出ましたね。
「良かったー」って。
60歳で宅建を取った父の後ろ姿が教えてくれること

こういう「年齢を重ねてからの挑戦」って、性格的な部分が大きいですね。
父も60歳を過ぎてから宅建(宅地建物取引士)を取りました。
当時父は、「記憶力が落ちてきたから、自分を試したい」と言って、
専門学校に通い、試験を受けて合格しました。
娘ながらに「すごいな」と思ったし、尊敬しましたね。
そして今、自分がその世代に近づいてきて、改めて思うんです。
年を取っても何かにチャレンジするという選択がある。
近年はドローンの操縦免許だけじゃなく、髪に興味を持って、毛髪診断士の資格もとりました。
また、日本に800年続く文化「水石」が好きで、石の雑誌に3年間連載をしています。
そういう“好き”を拾いながら、自分が心地いいものに囲まれて暮らしていると、
生活そのものが整っていく。
私は多分、そういう「自分を満たす」感覚が昔から好きなんだと思います。
水石、絵を描く、DIYをする、植木を育てる――
そんな好奇心で始めたことが、全部繋がっているんだな、と感じています。
この先60歳になっても、私はまた“うっかり”色々なことに
挑戦し続けていると思います。
人間、くよくよしても、楽しんで過ごしても、時間は同じだけ進む。
だったら、楽しい方がいい。
人生は何歳になっても更新できると思います。
Maho Toyota
1967年東京都生まれ。
高校在学中にモデルデビューしパリコレクション等にも出演。
1989年には女優デビュー以降多数のドラマや映画、舞台等に出演。
また芸術の造詣が深く絵画の個展を開き京友禅の絵師として着物のデザインを手がける。家具などの木工、手芸もこなし、DIY番組を持つ等、趣味の域を超えた活動を展開。
撮影/田頭拓人 取材/見学裕己子、山崎智子 構成/河合由樹